向井秀徳が影響を受けたロック

どうも、タテガミELECTRIC akaこだまです。今回は僕が大好きな向井秀徳さんが影響を受けた&お気に入りのロックを紹介します。なぜロックに限定しているかというと、向井さんが影響を公言しているジャズとかヒップホップのことまで書き出すとキリがない、との決断に至ったからです(笑)。

↓参考資料。フジテレビの、影響を受けた曲45曲を選ぶ、「45rpm」で選んだ45曲。


Television

向井秀徳が影響を受けたバンドを問われたときに真っ先に思い浮かぶのはまずこのテレヴィジョン。ナンバーガールのライブでも登場前のSEにテレヴィジョンの代表曲「Marquee Moon」がかかっていた。向井が「ギター2本」という編成に惹かれたのもテレヴィジョンの影響が強く、ギターマガジンのインタビューで「彼らに関しては、もはやロック・バンドというかジャズ・グループのフォーマットだと思ってるから。ソロ・プレイヤーのアルト・サックスとテナー・サックスがギターに置き換わってるような状況ですからね。」と発言したり、同じくギターマガジンでテレヴィジョンのVo,Gtトム・ヴァーレインに関して「エロい。」とだけコメントしたりしている。

 

Pixies

Cover art for Doolittle by Pixies

こちらもインタビューで良く名前が挙がるバンド。ナンバーガールもシングル「透明少女」のB面で「Wave of Mutilation」をカバーしている。ピクシーズドキュメンタリー映画が公開されるときも、向井は自分が影響を受けたということをはっきりと表明するコメントを寄せている。今は消されているブック・オフによるインタビューでも、「どっかねじり曲がってるっていうか、ささくれ立ってるというか。佐賀の田園地帯の一軒家の二階でジドーッとしてる高校生の私には非常にウマが合ったんですね。」と発言している。「実家の2階の一人部屋で、ピクシーズとかソニック・ユースとかジョン・コルトレーンとか聴いてウワーッてやってた」という発言も。フジテレビの45曲影響を受けた曲を選ぶ「45rpm」という企画では「HEAD ON」を選曲。

 

Sonic Youth

Cover art for Dirty by Sonic Youth

ナンバーガールの「ギターロック」成分に多大な影響を与えたノイズ・ロック・バンド。ナンバーガールのノイズ感や不協和音感はソニック・ユースの影響をひしひしと感じる。「ソニック・ユースのコード感を『コールド・コード』と呼んでおります。テレヴィジョンもしかりです。」という発言や、「ドラマチックなところが好き」という発言もある。また、ギターマガジンの吉野寿との対談で「『Goo』は今聴くと、メジャーの色気出しとるなっていう風に感じますね」とも語っている。45rpmでは「SUGAR KANE」を選曲。

 

2002年、ナンバガラストライブ時に名前を挙げたバンドたち

2002年のナンバーガールのラストライブ時に、向井はMCで北海道出身の「尊敬するバンド」を挙げていった。bloodthirsty butcherseastern youthfOULTHA BLUE HERB、Cowpers。今回は特にエピソードが多くある3組のことを書いていく。

まずはbloodthirsty butchers。メンバーとは交流があり、ナンバガの「ABSTRUCT TRUTH」という曲の歌詞にも、ヴォーカルの吉村秀樹の名前が登場する。ブッチャーズの曲「プールサイド」をカバーしたこともある。

続いてeastern youth。こちらも交流があり、テレビ番組で向井とイースタンのメンバー3人で対談したこともある。向井はイースタンを聴いて「腹から声出さないといかんな」と思い、か細かった歌声をがなるように変えたという話がある。45rpmでは「裸足でいかざるを得ない」を選曲。

最後にfOULfOULドキュメンタリー映画が公開されたときに、向井はコメントを添えていて、「掴みたい。藁をも掴もうとして、ドラムセットの高い天井のシンバルを鳴らすのである。そして掴みそびれてカスったその残響がfOULの音だ。」と表現している。45rpmでは"OPPORTUNITY"を選曲。

 

Led Zeppelin

Cover art for Led Zeppelin III by Led Zeppelin

言わずと知れたハード・ロック・バンド。向井はZAZEN BOYSのことを「法被を着たレッド・ツェッペリン」と例えているくらい明確に影響を公言していて、初めてギターでコピーしようとしたのもツェッペリンの「アキレス最後の戦い」だった(実際はコピーできずに挫折し、その後自分の曲を作るようになった)。ZAZEN BOYSが始動した頃のインタビューでも「去年出たDVDでライヴ映像を見て、非常にでかいショックがありまして。もう、どれだけ凄まじいバンドなのかっていうのを再確認しましたね。とにかく音楽的にもすごくオリジナルだし、それぞれの表現がもう半端じゃないと。しかもそれを一つの塊にして出そうとしてるっていうか、プレイヤー同士のせめぎあいではなく一丸となって出すっていうか、その姿には非常に影響されました。」と語っている。アルバムでは3枚目が一番好きとのこと。

 

The Rolling Stones

Cover art for Black and Blue by The Rolling Stones

こちらも超メジャーロックンロールバンド。向井はテレヴィジョンと同じく「ギター2本」の編成に惹かれたバンドとしてストーンズを挙げていて、「Brown Sugar」の掛け合いを「あれがバンドなんですよね」と発言している。一番好きなアルバムは「Black and Blue」で、理由を「ファンキーだから。そして、超ぐっとくる同じようなスタイルのバラードが2曲入っている。1曲にしておけばいいのに2曲も入っているのがいいんですよね。」と語っている。「ストーンズは75年から85年、『Black & Blue』から『Dirty Work』が好きですね」との発言も。45rpmでは「HOT STUFF」を選曲。

 

Prince

Cover art for Parade by Prince and The Revolution

向井は小学生のとき、8歳上の兄に日夜「パレード」のビデオを見せ続けられたという逸話があり、「私はその時小学生で何も理解できませんでした。それでも何度も何度も聴かされるうちに、だんだんこの人は、クラスのみんなが聴いているボーイ・ジョージとかMTVのヒットチャートに入っているほかのアーティストとは違う、本当に特別な存在なんだっていうのをうっすらと認識し始めたんですよね。「パレード」の先行シングルで「KISS」を聴いたときに、もうほかのメインストリームの音楽とがーっと差をつけたんだなって――その時は中1だったんですけれど――思いましたね。」と語っている。また、向井はプリンスを語るときによく「毒個性」という言葉を使う。45rpmでは「SIGN OF THE TIMES」を選曲。

 

その他、影響を受けたロック&お気に入りの曲

ナンバーガールの「SAPPUKEI」と「NUM-HEAVYMETLLIC」のプロデューサーにデイヴ・フリッドマンを起用したのはおなじくデイヴ・フリッドマンがプロデュースしたThe Flaming Lipsの「Clouds Taste Metallic」の音が好きだったからと公言している。

ギターマガジンのインタビューで、Dinosaur Jr.の印象に残っている曲を問われたときには「The Wagon」を挙げていて、「シングルで初めて聴いたときに、ギター・サウンドもさることながら歌の世界に一番惹きつけられました。こんなにグワーって激しく鳴ってるのに、歌はある意味すごく弱々しくて、か細い。あのギャップに惹きつけられましたね。」と語っている。

ナンバーガールの初期は、リチャード・ロイド(元テレヴィジョン)、ロバート・クインなどの名だたるギタリストたちの鋭いギターサウンドをバックにセンチメンタルな歌を歌うMatthew Sweetに共感していた。そのほかにもSuperchunk、Velvet Crush、Lunaなどのバンドが当時好きで、「こういった音にしたい」と思っていた。特にVelvet Crushは、ナンバーガール結成の際に向井がアヒト・イナザワに「Velvet Crushみたいなバンドやらん?」と誘ったほど、初期のサウンドに影響を与えている。

2001年のフジロックNeil Youngが出た際、向井はニールの出番の時具合が悪かったが、1曲目の「Don't Cry No Tears」の演奏が始まったとき、「これは吐いてでも観る!」と決めてNeil Youngの演奏を観たら具合が良くなりさらにビールを飲んだ、というエピソードがある。↓これはNeil Youngの「Hey Hey, My My」を弾いているところ。

https://twitter.com/tomokazkawamura/status/1122066485919141888

Shellacに関しては、「アルバム3枚を連続して聴くと、至福の時間ですよ、至福。やはりオーディオ的な聴き方をしてしまいますね。サウンド・メイキング的にかなりこだわってるし、ドラム、ギターの音が生々しいから。聴いてて楽しいですね」と語ったり、Shellacの魅力を問われた際には、「この世のすべてに憤っている男のサウンドってことですかね。オレ憤ってるんだってギターをガッて鳴らすっていうよりは、この憤りの音をレコーディングしてやるっていう。」と答えている。45rpmでも、ShallacのギターであるSteve Albiniが在籍していたRapemanの「MONOBROW」を選曲している。

ギターマガジンのインタビューで、Rideが好きで特に「Like A Daydream」が好きだと発言している。

ゆらゆら帝国に関して、「緑のやつ(『ゆらゆら帝国のしびれ』)は最高ですよ。すごく踊れるんですよ。すごいダンス、というかビートがある。“夜行性の生き物が三匹”、あれは〈狂乱節〉ですね。あと赤いほう(『ゆらゆら帝国のめまい』)に入ってる“ボタンが一つ”、これも最高ですね」と発言している。

1999年に放送されたテレビ番組で、The PoliceのCDを手にして「70年代後半ぐらいのパンク・バンドとか、結構レゲエとか接近していて、そういったバンド、多いわけですけど...ポップ・グループとか...スリッツとかいますけど。あの感じの、あの匂いが、なんかこう...好きなんですよね。」と発言している。さらに、The Policeからコード感とドラムビートの影響を受けたという発言もある。

ナンバーガールの「Tombo the Electric Bloodred」は、向井が「今日、家のイエスを聴いてきたから」と言ってできた曲だという(田渕ひさ子談)。さらに、「エスは観に行きました。ジョン・アンダーソンの歌声は好きですね、あの突き抜けるような。スティングとも近いですけど、ああいう感じのヴォーカルが好きなんですよね」という発言もある。

Captain Beefheartは、「Trout Mask Replica」に関して「〈鯉男〉って呼んでるんですけど、これもよう聴いとるなあ、高校んときぐらいから。必ず〈ロック名盤選〉とかに載ってるから買ったんですけど、高校んときはわからなかったですよ。〈なんだコレは!?〉と、ずっと思ってる。でも、ずっと聴いていくうちに、おもしろみがね、変わっていくわけですよ」と発言したり、ZAZEN BOYSの4枚目にインスパイアを与えた盤の一つとして「Doc At The Rader Station」を挙げて「常に聴いている一枚」と発言している。

また、「SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT」のライナーノーツには「彼の口から出るバンドの名前は幅広く、」と書かれた後にテレヴィジョンやピクシーズなどと並んで。「ラッシュ」と「PJハーヴェイ」が書かれている。この「ラッシュ」はカタカナで書いてあるので、RushなのかLushなのかは不明である。

「MANGA SICK」のレコーディングの際に、仮のトラックの仕上がりに不満があった向井は、プロデューサーのデイヴ・フリッドマンに「Gang of Fourみたいな感じにならんですかね」と頼んだことがある。

「NUM-HEAVYMETALLIC」は、Dry & HeavyAugustus Pabloの哀感をかっこいいなと思ったのがきっかけでダブの影響が濃くなった。

 

参考資料:

tower.jp

tower.jp

otn.fujitv.co.jp

e-vol.co.jp

getnavi.jp

CDのライナーノーツ、NHK-FMサウンドクリエイターズファイル」、ギターマガジン

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。向井秀徳というマジで好きなミュージシャンだからこういうことできるのであって、「影響を受けたミュージシャンシリーズ」みたいに展開する予定はありません(笑)。

 

こだま、セルフ・インタビュー

こんにちは、タテガミELECTRIC、akaこだまです。今日、Soundcloudにて"Bad Role Model"という曲をリリースしました。そこで、今まで出した曲の制作背景とか、元ネタとなった曲の話とかをしたいなと思ったので、今回は「セルフ・インタビュー」という名目でインタビュアーと、インタビューされる側の二つを一人でやります。己の妄想癖が炸裂した結果がこれだ!!

soundcloud.com

インタビュアー(以下、太字の場合はインタビュアーを表す):今回はインタビューということで、よろしくお願いします。

 

こだま(以下、細字の場合はこだまを表す):よろしくお願いします。

 

早速なんですが、こだまさんはどのように作曲をし、それを録音しているのですか?

 

作曲は、大体ギターです。ギターでコード進行と歌メロを作って。録音は、リズム隊の打ち込みはパソコンのCakewalk、もしくはBandlabのオンラインのサービスです。ギターとボーカルはMTRにケーブルをさして録ってます。パソコンにギターを繋ぐとどうしてもラグができてしまうので、MTRに録音した音源をパソコンに移して、色々調節してから最終的にCakewalkに移してまとめてます。最終的にCakewalkに移してからまとめるっていうのは、他の音も全部そうです。歌詞は、演奏部分の作業が全て終わってから考えるのがほとんどです。歌メロもそのときに考えます。

 

新曲"Bad Role Model"について

 

なるほど。では、新曲の"Bad Role Model"もそのように作られたのですか?

 

うーん...まあ大体そうです。ただ、今回は珍しくコード進行と歌メロと歌詞が同時にできて。だから、ギターとボーカルだけのデモを作って、翌日メモ代わりにそれを聴いて打ち込みをしました。他は全部さっき言った通りです。

 

"Bad Role Model"の制作背景や、曲の元ネタを教えてください。

 

夜の19時くらいに「暇だしギターでも触るか」と思って適当に弾いてたら、急にPulpの"Do You Remember The First Time?"という曲のサビを急に思い出して。あの曲って、Aメロはニューウェイヴっぽいんですけど、サビでギターとベースがいかにもロックンロールなリズムになるんですよ。で、「あ、あれいいな。曲に取り入れよう。」と思って。でも、あえて曲は聴き返さなかったです。ここで聴き返したらその曲に引っ張られ過ぎちゃうから。それで、19時から21時くらいまでコード進行と歌メロに思考を巡らせて、核の部分は完成しました。そこから次の日起きて、朝っぱらから打ち込みを始めて、朝のうちに終わらせました(笑)。そこからは夕方に終わらせて、夕方のうちにアップしました。

あ、元ネタか...さっきのPulpの曲が一番強いですけど、syrup16gの影響は確実に受けていますね。曲の展開とか。あとは、聴きすぎて歌い方も五十嵐さんっぽくなってると思う。

 

本日はありがとうございました。他の曲についてもまた聞かせてください。

 

はい!よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

ART-SCHOOL "Requiem For Innocence"

こんにちは、タテガミELECTRICです。ここ数日体調不良で休んでいました。10月15日のART-SCHOOLsyrup16gPOLYSICSの対バンも、その体調不良のためいけませんでした...

恨みを晴らすためとかじゃないですけど、今回はART-SCHOOLの1stアルバム"Requiem For Innocence"について書きます。

ART-SCHOOLは前に書いたsyrup16gと同じく、今年聴き始めた。最初は良さが分からなかったが、聴いていくうちに次第にハマっていき、今ではsyrup16gと並んで最も聴くバンドになっている。

この"Requiem For Innocence"はサブスクにないからCDをTSUTAYA DISCASで借りて聴いた(その前に一回YouTubeで聴いたけど)。syrup16gの"COPY"は、春の雰囲気が漂っていると思うとこの前書いたが、このアルバム及びART-SCHOOLは「冬」のイメージ。寒くて孤独で、それでも「美しさ」を必死で求めるような、独特なエネルギー。僕はそこに惹かれたんだと思う。

とはいえ、正直言ってsyrup16gほど好きな理由がハッキリしてなくて、もちろん声も演奏も好きなんだけど、いつまで経っても「なんか好き」しか言葉が出てこない。まあ、それでいいか。

楽曲の特徴

翻訳文体で綴られた、孤独で悲痛な歌詞が特徴。そこに生活感はなく、むしろ西洋の映画のようなロマンティックな世界観である。サビの出だしで英語を使ったりするのは洋楽の影響をモロに感じるが、そういった「受けた影響に忠実」なところが、かえってこのバンドの特徴になっている気がする。また、他の作品を曲のタイトルにすることが多い。本作の"BOY MEETS GIRL"、"DIVA"、"欲望の翼"、"アイリス"、"乾いた花"はすべて映画のタイトルそのまんまだし、"車輪の下"はヘッセの小説だ。

サウンドは90年代のグランジオルタナ直系で、歪んだギター2本とピック弾きベース、そして低音ドスの利いたドラムで構成される。ギターボーカル・木下理樹の3つ弦を押さえるパワーコードストロークと、ギター・大山純アルペジオや独特なリードが特徴。

そして何といっても一番特徴的でこのバンドを象徴しているのは木下理樹の少年のような声。その声で叫んだり、かすれたファルセットを出したりするボーカルは唯一無二で、悲痛だけど救われる感じがする。

ここからは、特に好きな曲について書きますよ。

1. BOY MEETS GIRL

(この映像、ぶっ続けで4回観たことがある。それくらい最高。)

まず、最初の歌詞。

ねえ 今から 美しいものを見ないか?

アルバムの1曲目の出だしで、これ以上に好きな歌詞ない。つかみとしてバッチリだし、何よりワクワクする。そして演奏は疾走感で溢れていて...本当に好きな曲。曲はAメロ→サビ→Aメロ→サビ→落ち着く→長いサビという単純な構成で、こういう勢い重視の曲に非常に合っている。一回落ち着くのがニクい。最後の長いサビの絶叫コーラスも好き。あと、左チャンネル(木下理樹)のギターがパワーコードで、右チャンネル(大山純)のギターがメロディーを弾くというのはこのアルバムの他の曲でもよく聴ける。リードとリズムでここまでキッチリ分かれているのは、他のバンドもやってないかも。

4. 車輪の下

上述の通り、曲名はヘルマン・ヘッセの同名の小説から。ずっと同じコード進行で最後まで突っ走る痛快な曲。このアルバムを最初に聴いたときに一番印象に残った曲。イントロのベースで「来たー!!」ってなる。ベースイントロっていいですよね。そしてサビで一気にサウンドが開けて歌われるこの歌詞!

アイソレーション Hello,my name is monster

POLYSICSのハヤシさんがこの曲をライブで聴いて、「この人は絶対にJoy Divisionが好きだ!」と思って話しかけたという話があるけど、たぶんこの「アイソレーション」の部分でそう思ったってことかな?(Joy Divisionの曲で"Isolation"というのがあるし、ART-SCHOOLと同様に「アイソレーション」と叫んでいる)

他にも、「うんざりさ♪ヘドが出る♪」と軽快に歌うところとか、最後の「アイソーレーションレーショォン↓」とか、好きなところはいっぱいある。単純なようで色々なアイデアが刻まれていて楽しい。

6. サッドマシーン

曲名はThe Smashing Pumpkinsの"Here Is No Why"の歌詞からかな?この「サッドマシーン」という曲は、なぜだかわからないけど他の疾走曲よりもポップに聴こえる。サビで「サッドマシーン」と連呼するのがCMソングのような効果を発揮しているからなのか、最後のサビのバックで儚く響くピアノのせいなのかは分からないが、かなりとっつきやすいと思う。

灰になる前に 助けて 助けてよ

演奏が落ち着くところで「助けて」を連呼し、その後叫ぶ。疾走感のある曲じゃないと、それはちょっと痛々しすぎて聴いていられないかもしれないけど、この曲は聴ける。むしろ少し救われるような感覚になるのはART-SCHOOLならでは。

11. シャーロット

アルバムの最後の一つ前に置かれた、木下理樹のダークサイドがよく表れた暗い曲。吐息混じりのボーカルは無気力さを感じさせるけど、悲しくて泣いたときとか、そういうギリギリの状態が終わりそうなときの、少し滲み出てくる勇気みたいな曲。だけど、感想を書く際思わず詞的になってしまうような、ロマンティックさもある。

次に目覚めたら、誰かを愛せる そんな気がして

次に目覚めたら、全てが消える そんな気がして

誰かを愛したいという希望と、全てが消えるかもしれないという虚無感。どちらが勝つでもなく、ただひたすらこの曲に揺らぐ。これをアルバムのこの位置に置くのは、なんというか粋。

12. 乾いた花

「シャーロット」で泣きつかれて、でも少し勇気が出て、その小さな勇気が続く美しいパワーポップ曲。ART-SCHOOLのメロディーはだいたい綺麗だと思いますが、この曲はなぜかその中でも頭一つ抜けてるように聴こえる。「シャーロット」の後だし、アルバムの最後っていうのもあるけど。

ゴミ溜めに咲き誇る花びら 君の眼のその中

触れたなら崩れ落ちそう でも

生きて行ける 気がして

この流れで「生きていける気がする」とか言うのはズルいよ、生きていきたくなっちゃうじゃん。この歌詞に救われた人は多いと思う。

 

まとめ

ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました!ART-SCHOOLを聴いたことがない人はぜひ聴いてみてください!前回の"COPY"は全曲レビューしたけど、それは"COPY"だからできたこと(全部の曲に思い入れがあるアルバムがそんなにない)なので、大体のレビューはこういう感じで特に好きな曲を選んでそれについて書くことになると思います。それでは!

 

syrup16g "COPY"

こんにちは、タテガミELECTRICです。はてなブログを始めました。前は別のサービスで記事を書いてたんですが、なんかリセットしたくなってここに移りました。色々アルバムについてとか、テーマを決めて曲を選んでその曲について書くみたいなことしたいなと思ってます。

 

今回はsyrup16gの1stアルバム"COPY"について書きます。

このアルバムを初めて聴いたのは実は今年で、去年までは見向きもしていなかった。「どうせ、典型的なロキノン系だろう」と思っていた。だが今、ドハマりしている。ほぼ毎日syrup16gを聴いている。その美しいメロディーと、スリーピースの繊細でしなやかな旋律、そして人間の内省を描く歌詞が大好きだ。

syrup16gはよく「鬱ロック」と言われるが、僕はこの言葉のせいでsyrup16gを遠ざけていた。「鬱ロック」という言葉を使えばそういう暗いバンドをいっぺんにまとめてしまうことはできるけど、その言葉が、その中にまとめられたバンドを安っぽくしているように思える。だし、第一に「へえ、『鬱ロック』なんだ、聴こう。」ってなる人、いるのかな?

話がそれてしまった。本題に移ろう。

このアルバムにはなんとなく、「春」の雰囲気が漂っている気がする。新学期とか新生活とか、新年度を迎える前後の漠然としたメランコリックな感情。不安感の一歩手前のような、複雑な心模様にぴったり合う。

1. She was beautiful

こんな静かな曲で始まるのは想定外だったので、初めて聴いたときは正直、ちょっとがっかりだった。でも、この曲から始まることがこのアルバムを名盤たらしめていると思うし、普通にこの曲、1曲目以外に置く場所がない気がする。ミニマルなドラムとメロディアスなベースの上に乗る、幾重にも重なるギターが幻想的。そして歌詞。

いつまでも子供のままで あの時の言葉を今日も噛み砕いて 眠る

いつまでも子供のままで あの時の笑顔をずっと忘れないで

「あの時」の栄光とはかけ離れた今を憂いながら、「あの時」の言葉や笑顔を思い出している。その様子を、「いつまでも子供のまま」と自虐しているんだろう。ボーカルの五十嵐さんは「小学生のころが全盛期だった」とか言ってた気がするから、つまりそういうことなのかな。

2. 無効の日

スローな前曲から一転、ギターが歪んで暴れ出すが、すぐに大人しくなる。「太陽するりと抜けずらかって」のところの演奏がグルーヴィで好き。他の曲にも顕著だが、やはり佐藤さんのベースラインは最高。ここまでメロディーが綺麗なベースを弾ける人、なかなかいないと思う。

どこかで繋いだあの手は遠くなる

「遠くなる」と歌っているときにはもうすでに、どこで手を繋いだかは忘れてしまっているのか...悲しい。syrup16gの歌詞は救いようがないほど暗いのに、聴き手を心地よくさせてしまう。それも感傷マゾに頼らずに。それは普通に美しいメロディーに乗るからこそだとは思うが。

3. 生活

君に言いたいことはあるか そしてその根拠とは何だ

涙流してりゃ悲しいか 心なんて一生不安さ

言わずと知れた代表曲。僕がこの曲を初めて聴いたときは、「心なんて一生不安」と言い切ってしまうところに驚いた。そういう精神状態のときに歌詞を書いたのかもしれないが、そんなことを歌詞にするなんて、あざといな、と。しかし、この一文を含む冒頭部分、非常に覚えやすい。一回聴いただけで、メロディーとともに覚えてしまったほどには。それがフックとなって聴く人の心にスッと入ってくるんだろう。そういう意味では実にキャッチーだ。

しかし、なぜこの曲が代表曲なのか。それは単純に普遍的な魅力を持ったメロディー・曲構成だからだと思う。それに何度も聴きたくなってしまう。最高。

4. 君待ち

スローテンポの曲。メジャー調で儚いリフが歪むのが好き。「君」を待つ主人公と、雨の中笑う「君」。しかし、

おいで手の鳴る方へ 素敵なあの頃へ

この一行で、「あれ、現在じゃなくて昔のことを思い出してるのかな」となる。そこは"She was beautiful"と通ずる部分。今の自分に不満があるから、昔の楽しかったことを思い出して気を紛らわせるんだ。

そして、僕が凄いと思うのはここ。

真理なんてデタラメ 勇気なんて出さないでくれ

ひどく落ち込むと、元気になりたいとか、そんなこと思わなくなる。それどころか、「元気になりたくない、ずっと落ちてたい」という気持ちになるときもある。そういう時に感情を、「勇気なんて出さないでくれ」と表現しているのでは。凄まじい一行だ。

5. デイパス

フィードバック音が耳に突き刺さる、攻撃的な曲。「働かないくせに偉そうね」とか「君は死んだ方がいい」とか、これでもかと何かを否定してくる。それでもサウンドがロックでかっこいいから、なんか痛快なんだよな。途中16ビートになるところとか、本当に器用だなぁ。かっこいいなぁ。

歌になんない日々はそれはそれでOK

後の「ソドシラソ」という曲でも「歌うたって稼ぐ 金をとる」という歌詞があるように、五十嵐さんはネガティヴな曲を歌って成功していることにずっと葛藤があるのではないか。それでこの歌詞。「歌になんない日々」っていうのは気分が落ち込むことがない、いたって普通の日々を指すと僕は解釈する。大体の人ならそれでいいと思うはずだが、ネガティヴな歌詞を売りにしている人にとっては、どっちがいいのか分からない。そしてその心理状態までも曲にしてしまう。これも壮絶な曲だ。

6. 負け犬

youtu.be

このアルバム"COPY"の中で一番堕ちる曲。歌詞も一番暗いし、イントロのギターなんか、これでもかっていうくらいの暗さ。だけど、歌が入ったところは、普通に名曲然としたいい演奏といいメロディーだと思う。特にベースのボンボンいう感じとか、ちょっとフォークロックっぽくていい。

頭ダメにするまでがんばったりする必要なんてない

それを早く言ってくれよ

うーむ、悲惨だ。多分、五十嵐さんは「頭ダメにするまでがんばる必要はないよ」って言われないと、どこで切り上げたらいいか分かんないし、それで結局限界まで頑張って虚無になってしまうような人なんだと思う。そしてそういう人たちに刺さる曲だと思う。

7. (I can't)Change the world

僕がこのアルバムの中で一番好きな曲。ギターリフが最高。F9からD9て、誰が思いつくの?この春風に吹かれながら何かを憂いている感じ。たまりません。外で聴きたいかも。

死ねない事に気付いて 当たり前に黄昏て

そう、普通の人は「死ねない事に気付いて黄昏る」なんてことないんだよ、それなのに僕は、当たり前のように毎日を憂いて黄昏ている...でも、死ねない事に気付くってことは、虚しさは残りつつも生きていくつもりってことだと思う。素晴らしい歌詞。ギターソロもエモーショナルで大好き。

8. Drawn the light

僕が「生活」の次に、このアルバムで好きになった曲。他の曲は1回聴いただけだとよくわからなかったけど、この曲はわかりやすいかっこよさを持ってる。テンポはかなり速くて、ドラムは四つ打ちになったり手数が多くなったりでかなり忙しい。ベースも忙しい。そしてサビの裏声が綺麗で好き。

「すべては愛」そりゃまあ ただ言ってるだけなら同感 そんな訳ないが

これも中々あざとい歌詞。「ひねくれてますよ」って感じがしてニクいんだけど、なんかわかる、わかっちゃうんだよな。

9. パッチワーク

多分楽したいのです これからもしたいのです

誰よりもしたいのです 惜しみなくしたいのです

いやあ、分かるなあ。この曲、嫌な依頼とか来た時に頭の中で流れるし。これも非常にキャッチーな歌詞。コード進行とメロディーはおしゃれ。というか、syrup16gのコード進行って大体おしゃれな気がする。m7とかM7、9thとか多いイメージ。

というかこの曲、曲展開が天才的。「言ってることすらなんだったっけな」の後のリズム変わるところとか、最高。

10. 土曜日

この曲は個人的には"(I can't)Change the world"とセットのイメージ。単にキーがFで同じって言うのもあるけど、やっぱり春風に吹かれてる感じ。そこが共通してるように思う。でも、こっちの曲の方がもっと希望を感じるかな。

土曜日なんて来る訳ない ただ迷っているばかり

土曜日なんて来る訳ないっていうのは、週5で月~金働いてる人がその月金の間に「しんどすぎて土曜日が来るとは思えねえ」とか思ってるってことなんだろうか。もしくは土曜日も仕事があって「土曜日なんて来ないでほしい」って思ってるのか。いずれにせよしんどい歌詞。だけど、そのしんどい歌詞が圧倒的に美しいサウンドとメロディーに乗ることによって、なんだか救われるような、救われるまでとはいかなくても、気持ちが楽になるような、そんな曲。僕は死にたいなと思ってるときにこの曲を聴いて死にたいという気持ちが一時的に消えたことがある。

まとめ

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。なかなかつたないレビューですが、自分が思ってることは書けたと思います。これからもこういう風に、好きなアルバムについて記事を書けたらいいなと思っています。それでは!