syrup16g "COPY"

こんにちは、タテガミELECTRICです。はてなブログを始めました。前は別のサービスで記事を書いてたんですが、なんかリセットしたくなってここに移りました。色々アルバムについてとか、テーマを決めて曲を選んでその曲について書くみたいなことしたいなと思ってます。

 

今回はsyrup16gの1stアルバム"COPY"について書きます。

このアルバムを初めて聴いたのは実は今年で、去年までは見向きもしていなかった。「どうせ、典型的なロキノン系だろう」と思っていた。だが今、ドハマりしている。ほぼ毎日syrup16gを聴いている。その美しいメロディーと、スリーピースの繊細でしなやかな旋律、そして人間の内省を描く歌詞が大好きだ。

syrup16gはよく「鬱ロック」と言われるが、僕はこの言葉のせいでsyrup16gを遠ざけていた。「鬱ロック」という言葉を使えばそういう暗いバンドをいっぺんにまとめてしまうことはできるけど、その言葉が、その中にまとめられたバンドを安っぽくしているように思える。だし、第一に「へえ、『鬱ロック』なんだ、聴こう。」ってなる人、いるのかな?

話がそれてしまった。本題に移ろう。

このアルバムにはなんとなく、「春」の雰囲気が漂っている気がする。新学期とか新生活とか、新年度を迎える前後の漠然としたメランコリックな感情。不安感の一歩手前のような、複雑な心模様にぴったり合う。

1. She was beautiful

こんな静かな曲で始まるのは想定外だったので、初めて聴いたときは正直、ちょっとがっかりだった。でも、この曲から始まることがこのアルバムを名盤たらしめていると思うし、普通にこの曲、1曲目以外に置く場所がない気がする。ミニマルなドラムとメロディアスなベースの上に乗る、幾重にも重なるギターが幻想的。そして歌詞。

いつまでも子供のままで あの時の言葉を今日も噛み砕いて 眠る

いつまでも子供のままで あの時の笑顔をずっと忘れないで

「あの時」の栄光とはかけ離れた今を憂いながら、「あの時」の言葉や笑顔を思い出している。その様子を、「いつまでも子供のまま」と自虐しているんだろう。ボーカルの五十嵐さんは「小学生のころが全盛期だった」とか言ってた気がするから、つまりそういうことなのかな。

2. 無効の日

スローな前曲から一転、ギターが歪んで暴れ出すが、すぐに大人しくなる。「太陽するりと抜けずらかって」のところの演奏がグルーヴィで好き。他の曲にも顕著だが、やはり佐藤さんのベースラインは最高。ここまでメロディーが綺麗なベースを弾ける人、なかなかいないと思う。

どこかで繋いだあの手は遠くなる

「遠くなる」と歌っているときにはもうすでに、どこで手を繋いだかは忘れてしまっているのか...悲しい。syrup16gの歌詞は救いようがないほど暗いのに、聴き手を心地よくさせてしまう。それも感傷マゾに頼らずに。それは普通に美しいメロディーに乗るからこそだとは思うが。

3. 生活

君に言いたいことはあるか そしてその根拠とは何だ

涙流してりゃ悲しいか 心なんて一生不安さ

言わずと知れた代表曲。僕がこの曲を初めて聴いたときは、「心なんて一生不安」と言い切ってしまうところに驚いた。そういう精神状態のときに歌詞を書いたのかもしれないが、そんなことを歌詞にするなんて、あざといな、と。しかし、この一文を含む冒頭部分、非常に覚えやすい。一回聴いただけで、メロディーとともに覚えてしまったほどには。それがフックとなって聴く人の心にスッと入ってくるんだろう。そういう意味では実にキャッチーだ。

しかし、なぜこの曲が代表曲なのか。それは単純に普遍的な魅力を持ったメロディー・曲構成だからだと思う。それに何度も聴きたくなってしまう。最高。

4. 君待ち

スローテンポの曲。メジャー調で儚いリフが歪むのが好き。「君」を待つ主人公と、雨の中笑う「君」。しかし、

おいで手の鳴る方へ 素敵なあの頃へ

この一行で、「あれ、現在じゃなくて昔のことを思い出してるのかな」となる。そこは"She was beautiful"と通ずる部分。今の自分に不満があるから、昔の楽しかったことを思い出して気を紛らわせるんだ。

そして、僕が凄いと思うのはここ。

真理なんてデタラメ 勇気なんて出さないでくれ

ひどく落ち込むと、元気になりたいとか、そんなこと思わなくなる。それどころか、「元気になりたくない、ずっと落ちてたい」という気持ちになるときもある。そういう時に感情を、「勇気なんて出さないでくれ」と表現しているのでは。凄まじい一行だ。

5. デイパス

フィードバック音が耳に突き刺さる、攻撃的な曲。「働かないくせに偉そうね」とか「君は死んだ方がいい」とか、これでもかと何かを否定してくる。それでもサウンドがロックでかっこいいから、なんか痛快なんだよな。途中16ビートになるところとか、本当に器用だなぁ。かっこいいなぁ。

歌になんない日々はそれはそれでOK

後の「ソドシラソ」という曲でも「歌うたって稼ぐ 金をとる」という歌詞があるように、五十嵐さんはネガティヴな曲を歌って成功していることにずっと葛藤があるのではないか。それでこの歌詞。「歌になんない日々」っていうのは気分が落ち込むことがない、いたって普通の日々を指すと僕は解釈する。大体の人ならそれでいいと思うはずだが、ネガティヴな歌詞を売りにしている人にとっては、どっちがいいのか分からない。そしてその心理状態までも曲にしてしまう。これも壮絶な曲だ。

6. 負け犬

youtu.be

このアルバム"COPY"の中で一番堕ちる曲。歌詞も一番暗いし、イントロのギターなんか、これでもかっていうくらいの暗さ。だけど、歌が入ったところは、普通に名曲然としたいい演奏といいメロディーだと思う。特にベースのボンボンいう感じとか、ちょっとフォークロックっぽくていい。

頭ダメにするまでがんばったりする必要なんてない

それを早く言ってくれよ

うーむ、悲惨だ。多分、五十嵐さんは「頭ダメにするまでがんばる必要はないよ」って言われないと、どこで切り上げたらいいか分かんないし、それで結局限界まで頑張って虚無になってしまうような人なんだと思う。そしてそういう人たちに刺さる曲だと思う。

7. (I can't)Change the world

僕がこのアルバムの中で一番好きな曲。ギターリフが最高。F9からD9て、誰が思いつくの?この春風に吹かれながら何かを憂いている感じ。たまりません。外で聴きたいかも。

死ねない事に気付いて 当たり前に黄昏て

そう、普通の人は「死ねない事に気付いて黄昏る」なんてことないんだよ、それなのに僕は、当たり前のように毎日を憂いて黄昏ている...でも、死ねない事に気付くってことは、虚しさは残りつつも生きていくつもりってことだと思う。素晴らしい歌詞。ギターソロもエモーショナルで大好き。

8. Drawn the light

僕が「生活」の次に、このアルバムで好きになった曲。他の曲は1回聴いただけだとよくわからなかったけど、この曲はわかりやすいかっこよさを持ってる。テンポはかなり速くて、ドラムは四つ打ちになったり手数が多くなったりでかなり忙しい。ベースも忙しい。そしてサビの裏声が綺麗で好き。

「すべては愛」そりゃまあ ただ言ってるだけなら同感 そんな訳ないが

これも中々あざとい歌詞。「ひねくれてますよ」って感じがしてニクいんだけど、なんかわかる、わかっちゃうんだよな。

9. パッチワーク

多分楽したいのです これからもしたいのです

誰よりもしたいのです 惜しみなくしたいのです

いやあ、分かるなあ。この曲、嫌な依頼とか来た時に頭の中で流れるし。これも非常にキャッチーな歌詞。コード進行とメロディーはおしゃれ。というか、syrup16gのコード進行って大体おしゃれな気がする。m7とかM7、9thとか多いイメージ。

というかこの曲、曲展開が天才的。「言ってることすらなんだったっけな」の後のリズム変わるところとか、最高。

10. 土曜日

この曲は個人的には"(I can't)Change the world"とセットのイメージ。単にキーがFで同じって言うのもあるけど、やっぱり春風に吹かれてる感じ。そこが共通してるように思う。でも、こっちの曲の方がもっと希望を感じるかな。

土曜日なんて来る訳ない ただ迷っているばかり

土曜日なんて来る訳ないっていうのは、週5で月~金働いてる人がその月金の間に「しんどすぎて土曜日が来るとは思えねえ」とか思ってるってことなんだろうか。もしくは土曜日も仕事があって「土曜日なんて来ないでほしい」って思ってるのか。いずれにせよしんどい歌詞。だけど、そのしんどい歌詞が圧倒的に美しいサウンドとメロディーに乗ることによって、なんだか救われるような、救われるまでとはいかなくても、気持ちが楽になるような、そんな曲。僕は死にたいなと思ってるときにこの曲を聴いて死にたいという気持ちが一時的に消えたことがある。

まとめ

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。なかなかつたないレビューですが、自分が思ってることは書けたと思います。これからもこういう風に、好きなアルバムについて記事を書けたらいいなと思っています。それでは!