ART-SCHOOL "Requiem For Innocence"

こんにちは、タテガミELECTRICです。ここ数日体調不良で休んでいました。10月15日のART-SCHOOLsyrup16gPOLYSICSの対バンも、その体調不良のためいけませんでした...

恨みを晴らすためとかじゃないですけど、今回はART-SCHOOLの1stアルバム"Requiem For Innocence"について書きます。

ART-SCHOOLは前に書いたsyrup16gと同じく、今年聴き始めた。最初は良さが分からなかったが、聴いていくうちに次第にハマっていき、今ではsyrup16gと並んで最も聴くバンドになっている。

この"Requiem For Innocence"はサブスクにないからCDをTSUTAYA DISCASで借りて聴いた(その前に一回YouTubeで聴いたけど)。syrup16gの"COPY"は、春の雰囲気が漂っていると思うとこの前書いたが、このアルバム及びART-SCHOOLは「冬」のイメージ。寒くて孤独で、それでも「美しさ」を必死で求めるような、独特なエネルギー。僕はそこに惹かれたんだと思う。

とはいえ、正直言ってsyrup16gほど好きな理由がハッキリしてなくて、もちろん声も演奏も好きなんだけど、いつまで経っても「なんか好き」しか言葉が出てこない。まあ、それでいいか。

楽曲の特徴

翻訳文体で綴られた、孤独で悲痛な歌詞が特徴。そこに生活感はなく、むしろ西洋の映画のようなロマンティックな世界観である。サビの出だしで英語を使ったりするのは洋楽の影響をモロに感じるが、そういった「受けた影響に忠実」なところが、かえってこのバンドの特徴になっている気がする。また、他の作品を曲のタイトルにすることが多い。本作の"BOY MEETS GIRL"、"DIVA"、"欲望の翼"、"アイリス"、"乾いた花"はすべて映画のタイトルそのまんまだし、"車輪の下"はヘッセの小説だ。

サウンドは90年代のグランジオルタナ直系で、歪んだギター2本とピック弾きベース、そして低音ドスの利いたドラムで構成される。ギターボーカル・木下理樹の3つ弦を押さえるパワーコードストロークと、ギター・大山純アルペジオや独特なリードが特徴。

そして何といっても一番特徴的でこのバンドを象徴しているのは木下理樹の少年のような声。その声で叫んだり、かすれたファルセットを出したりするボーカルは唯一無二で、悲痛だけど救われる感じがする。

ここからは、特に好きな曲について書きますよ。

1. BOY MEETS GIRL

(この映像、ぶっ続けで4回観たことがある。それくらい最高。)

まず、最初の歌詞。

ねえ 今から 美しいものを見ないか?

アルバムの1曲目の出だしで、これ以上に好きな歌詞ない。つかみとしてバッチリだし、何よりワクワクする。そして演奏は疾走感で溢れていて...本当に好きな曲。曲はAメロ→サビ→Aメロ→サビ→落ち着く→長いサビという単純な構成で、こういう勢い重視の曲に非常に合っている。一回落ち着くのがニクい。最後の長いサビの絶叫コーラスも好き。あと、左チャンネル(木下理樹)のギターがパワーコードで、右チャンネル(大山純)のギターがメロディーを弾くというのはこのアルバムの他の曲でもよく聴ける。リードとリズムでここまでキッチリ分かれているのは、他のバンドもやってないかも。

4. 車輪の下

上述の通り、曲名はヘルマン・ヘッセの同名の小説から。ずっと同じコード進行で最後まで突っ走る痛快な曲。このアルバムを最初に聴いたときに一番印象に残った曲。イントロのベースで「来たー!!」ってなる。ベースイントロっていいですよね。そしてサビで一気にサウンドが開けて歌われるこの歌詞!

アイソレーション Hello,my name is monster

POLYSICSのハヤシさんがこの曲をライブで聴いて、「この人は絶対にJoy Divisionが好きだ!」と思って話しかけたという話があるけど、たぶんこの「アイソレーション」の部分でそう思ったってことかな?(Joy Divisionの曲で"Isolation"というのがあるし、ART-SCHOOLと同様に「アイソレーション」と叫んでいる)

他にも、「うんざりさ♪ヘドが出る♪」と軽快に歌うところとか、最後の「アイソーレーションレーショォン↓」とか、好きなところはいっぱいある。単純なようで色々なアイデアが刻まれていて楽しい。

6. サッドマシーン

曲名はThe Smashing Pumpkinsの"Here Is No Why"の歌詞からかな?この「サッドマシーン」という曲は、なぜだかわからないけど他の疾走曲よりもポップに聴こえる。サビで「サッドマシーン」と連呼するのがCMソングのような効果を発揮しているからなのか、最後のサビのバックで儚く響くピアノのせいなのかは分からないが、かなりとっつきやすいと思う。

灰になる前に 助けて 助けてよ

演奏が落ち着くところで「助けて」を連呼し、その後叫ぶ。疾走感のある曲じゃないと、それはちょっと痛々しすぎて聴いていられないかもしれないけど、この曲は聴ける。むしろ少し救われるような感覚になるのはART-SCHOOLならでは。

11. シャーロット

アルバムの最後の一つ前に置かれた、木下理樹のダークサイドがよく表れた暗い曲。吐息混じりのボーカルは無気力さを感じさせるけど、悲しくて泣いたときとか、そういうギリギリの状態が終わりそうなときの、少し滲み出てくる勇気みたいな曲。だけど、感想を書く際思わず詞的になってしまうような、ロマンティックさもある。

次に目覚めたら、誰かを愛せる そんな気がして

次に目覚めたら、全てが消える そんな気がして

誰かを愛したいという希望と、全てが消えるかもしれないという虚無感。どちらが勝つでもなく、ただひたすらこの曲に揺らぐ。これをアルバムのこの位置に置くのは、なんというか粋。

12. 乾いた花

「シャーロット」で泣きつかれて、でも少し勇気が出て、その小さな勇気が続く美しいパワーポップ曲。ART-SCHOOLのメロディーはだいたい綺麗だと思いますが、この曲はなぜかその中でも頭一つ抜けてるように聴こえる。「シャーロット」の後だし、アルバムの最後っていうのもあるけど。

ゴミ溜めに咲き誇る花びら 君の眼のその中

触れたなら崩れ落ちそう でも

生きて行ける 気がして

この流れで「生きていける気がする」とか言うのはズルいよ、生きていきたくなっちゃうじゃん。この歌詞に救われた人は多いと思う。

 

まとめ

ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました!ART-SCHOOLを聴いたことがない人はぜひ聴いてみてください!前回の"COPY"は全曲レビューしたけど、それは"COPY"だからできたこと(全部の曲に思い入れがあるアルバムがそんなにない)なので、大体のレビューはこういう感じで特に好きな曲を選んでそれについて書くことになると思います。それでは!